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泣ける話

2010/05/02 (Sun)

もう10年も前の話妻が他界し1年が経った頃
当時8歳の娘と3歳の息子がいた。
妻がいなくなったことをまだ理解できないでいる息子に対して
私はどう接してやればいいのか父親としての不甲斐なさに悩まされていた。
実際私も、妻の面影を追う毎日であった。
寂しさが家中を包み込んでいるようだった。

そんな時私は仕事の都合で家を空けることになり
実家の母にしばらくきてもらうことになった。
出張中何度も自宅へ電話をかけ子どもたちの声を聞いた。
2人を安心させるつもりだったが心安らぐのは私のほうだった気がする。

そんな矢先息子の通っている幼稚園の運動会があった。
〝ママと踊ろう〟だったかそんなタイトルのプログラムがあり
園児と母親が手をつなぎ輪になってお遊戯をするような内容だった。
こんなときにそんなプログラムを組むなんて…。
『まぁ(息子)、行くよ♪』
息子も笑顔で娘の手をとり二人は楽しそうに走っていった。
一瞬、私は訳が分からずに呆然としていた。
隣に座っていた私の母がこう言った。

『あなたがこの間九州に行っていた時に
正樹はいつものように泣いて、お姉ちゃんを困らせていたのね
そしたらお姉ちゃんは正樹に
「ママはもういなくなっちゃったけどお姉ちゃんがいるでしょ。
本当はパパだってとっても寂しいの。
だけどパパは泣いたりしてないでしょ?
それはねパパが男の子だからなんだよ。
まぁも男の子だよねだから大丈夫だよね?
お姉ちゃんがパパとまぁのママになるから」
そう言ってたのよ』

なんということだ…
娘が私の代わりにこの家を守ろうとしている。
場所もわきまえず流れてくる涙を止めることができなかった。
10年経った今無性にあの頃のことを思いだし、また涙が出てくる。

来年から上京する娘。
お父さんは君に何かしてあげられたかい?
君に今どうしても伝えたいことがある。

支えてくれてありがとう。
君は最高のママだったよ。
私にとっても。
正樹にとっても。
ありがとう……。

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