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泣ける話

2010/05/18 (Tue)

俺が23歳の頃
就職1年目の冬
俺の誕生日の日のこと 職場の人たちが
『誕生パーティーしてあげる!』
というので、家に
『今日は遅くなるよ。ご飯いらないから』
と電話を入れたら、父が
『今日はみなさんに断って早くかえってきなさい』
と言う

『だってもう会場とってもらったみたいだし悪いから行く』
と俺が言うといつもは温厚な父が
『とにかく今日は帰ってきなさい
誕生日の用意もしてあるから』
とねばる

『???』
と思いながら職場のみんなに詫びを入れて帰宅した
家にはその春から肋膜炎で療養中の母と、父
食卓にはスーパーで売っているような鶏肉のもも肉の
ローストしたみたいなやつとショートケーキ3つ
『何でわざわざ帰らせたの!
俺だってみんなの手前申し訳なかったんだよ!』
と言ってしまった

父は何か言ったと思うが覚えていない
母が『ごめんね……明日でもよかったね』
と涙ぐんだ。

俺は言い過ぎたな、と思った。
でも謝れず、もくもくと冷えた鶏肉とケーキを食べて部屋に戻った。

その2か月後
母の容態が急変し入院した。
仕事帰りに病院に行くと父がいた
廊下の隅で父が
『実は、お母さんは春から末期ガンだとわかっていたんだよ
隠していてごめん』
と呟いた

呆然として家に帰ったあと母の部屋の引き出しの日記を読んだ
あの誕生日の日のページに
「〇男に迷惑をかけてしまった。」
と書いてあった

ワーッと声を出して泣いた
何時間も『ごめんね』
と言いながら泣いた
夜が明ける頃には涙が出なくなった
すごい耳鳴りがした

4、5日して母は死んだ
仕事を辞めて看病していた父も数年前に死んだ
父が準備したささやかな誕生日パーティーをどうして感謝できなかったのか

母にとっては最後だったのに……

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