オイラが4才の頃に親父が事故で他界し、
女手一つでオイラと妹を育てて来てくれた母親。
パートを3つ掛け持ちし、
それこそ身を粉にして、
睡眠時間を削り育ててくれました。
オイラは母の苦労がわかっていたので、
反抗期にもグレることなく育ったのですが、
一度だけ母を苦しめてしまった事があります。
小学生のときにゲームボーイが流行りました。
友達が皆持っている中家計が苦しいのをわかってたつもりなのに、
どうしても欲しくなり母親に、
『みんなテトリスってゲーム持っていて
僕だけ持ってないんだ…。
お母さん僕も欲しいよ。』
と言ってしまったんです。
『家にはお金がないから我慢してね……』
と言う母。
悔しくて母に、
『なんで僕だけ…
なんで僕だけ。』
と泣いてしまったんです。
母は、
『ごめんね。本当にごめんね』
と号泣しながらオイラを抱き締めてくれました。
数ヶ月が過ぎた誕生日。
質素ながらも妹と3人でオイラの誕生日を
祝っていた時に母が…
『はい!
これ誕生日プレゼント。
欲しかったんでしょ。』
と渡してくれたのはテトリスのゲームソフト。
母親には本体が無いとできないよ…。
とは言えませんでした。
けどオイラは母の優しさが嬉しくて
ソフトを握りしめながら眠りにつきました。
裕福では無かったけれど幸せに暮らしていました。
けれどオイラが17才の時、
不幸は唐突にやってきました。
母親が突然倒れ長年に渡る苦労が祟ったのか
手の施しようがない末期ガンとの事。
母は
『お母さんのせいで辛い思いばっかりさせてごめんね…。
ちがう家に産まれたら幸せになれたのに。
これからもっと苦労と寂しい思いをさせちゃうね。』
と最後まで強くそして暖かくオイラと妹の手を握りながら
この世を去りました。
死に物狂いで貯めた68万の通帳を
オイラに渡して……。
母さん。
裕福ではなかったけどその分母さんの優しさや温もりをたくさんもらったよ。
ありがとう。
あの時もらった
【テトリス】
今でもたまに引っ張り出して遊んでます。
オイラの
一生の…
一生の宝物です!
圭介って友達がいた。
俺の親友だ。
何をするにも一緒だった。
周りから見たら気持ち悪いくらい。
そんくらい一緒だった。
喧嘩もした。
殴られた事もあったよな。
けど殴られてもそんな簡単に崩れてしまう関係じゃない。
次の日には腫れた顔を見て笑っていた。
俺は心の中を全て話せる友達だった。
けどもう存在しない。
圭介は病気だった…。
俺は亡くなる1年前から知っていた。
そして圭介は2年前から知っていた。
5年も10年も生きられる病気じゃなかった。
自分のように俺は悔しくてこいつが死ぬわけない…。
目の前でめちゃくちゃ笑っている圭介。
それを見て一緒になって笑っている俺。
互いに病気の事に触れる事は一度としてなかった。
互いに知っている圭介の病気の事。
それなのに俺らいつも笑っていた…。
それは二人でいる時は病気の事を忘れていたからだと思う。
こんなんでいいのか…。
って思う時もあった。
けど二人で会うのは生活の一部みたいになっていたから
当たり前のように二人で遊んでいた。
病気を知ってから半年くらい経った頃だった。
俺が圭介の家に遊びに行った時のこと
圭介は風呂に入ってくると言った。
一人で煙草を吸っているとき机から気配を感じた。
霊感とか全く持っていない俺がなぜか…。
机を開けると封筒が入っていた。
3通……。
一つに俺の名前が記されていた。
何も考えず開けてしまった。
遺言…。
立っていた俺は全身の血が爪先にいくような感じで崩れ落ちた。
『けんごへ…
お前って本当馬鹿だよな。
まぁ負けじと俺もだけど。
でも楽しかったよな。
つーかありがとな。
なんかさ色々あったけど最高の友達だよ。
これをお前が読んでる頃には、
俺はバイバイってことかな。
まさか泣いてるんじゃねぇよな!?
俺はお前が泣いてる所なんか見たくねぇよ!
気持ちわりぃもん。
笑って送ってくれよ!
俺は笑ってるからよ。
けんご…
マジでマジでありがとう。
心から感謝してます。
出会えてよかった。
遊べて嬉しかった 。
笑いすぎて腹筋が痛くなっちゃった時もあったな。
全てお前のおかげだよ。
ありがとう。
お前頑張れよ!
俺が見守ってやる!
けんご…
死ぬことを知ってるってめちゃくちゃ辛いんだよ。
でもな俺…
お前と居た時はなんか忘れてたなぁ。
死ぬって事…。
お前は体に気をつけて俺の分まで頼む。
ありがとう、けんご。
そしてさようなら。
また遊ぼうな。
圭介より』
泣くしか出来なかった。
慌てて元の場所にしまったそこへ帰ってきた圭介。
泣いてる俺を見て悟ったのだろう。
『お前まさか…』
ごめん…。
『そっか…
読んじまったんならしょうがないよな。
持って帰れよ。
大事にしてな』
あいつの前で初めて泣いた。
涙を止めようとしても止まらなかった。
そっと圭介は俺の肩を抱いた
『けんご…
お前ももう知ってるように俺はこんな事を書く状況まで追い込まれてる。
怖ぇよ…怖くて仕方ねぇよ。
でもお前といる時は忘れられるんだ。
頼む。
俺はお前の悲しむ姿は見たくない。
最後まで俺と笑っててくれねぇか…?』
俺は声にならなかった。
首を縦にふる事しか…。
それから半年。
あいつは亡くなった。
俺の大事な大事な友達。
ネタみたいだけど本当の話……。
俺は約束通り泣かないで最後まで笑った。
そして葬儀が終わって家で遺言を見てまた大泣きした。
遺言は涙でぐしゃぐしゃになっていた……。
俺は一人で声を振り絞って部屋で独り言った。
『じゃあな…圭介』