親友からの電話。
『足が痛いから入院するよたいしたことはないから一週間くらいだって』
笑いながらの連絡だった。
『そっか、がんばれよ』
まあ日常的な会話。
その時たいして気には止めなかった。
一週間後。
まだ入院してるとのこと。
エロ本を土産に病院を訪ねた。
病室に入るとそこには右足のない親友がいた。
いっきに視野が狭まり親友が見えなくなった。
その日の夜久しぶりに自転車で一緒に通った高校まで走ってみた。
16年前と景色はさほど変わりない田んぼ道…。
涙が溢れて止まらなかった。
今はもうその親友はいない。
癌だった。
足を切断しても全身への転移は止められなかったらしい。
でも親友は死ぬ直前まで生きることを諦めてはいなかった。
死ぬ前の日
『足が痛いんだ…
退院した後困るからさすってよ。
今まで親に迷惑かけたからさ
退院したら家業を継ごうと思うんだ。
帳簿だけでもつけれるようになりたいから簿記教えてくれよ』
がんばってた。
すごくがんばってた…。
その日から自分自身
【がんばる】って言葉を
使わなくなった。
というか使えなくなった。
親友に失礼で…。
何十年後かに親友に会うことがあるだろう。
『いい人生送れたか?』
と聞かれたら
『うん、がんばったよ』
と言えるようなそんな人生を送りたい。
僕の彼女の話を聞いて下さい。
僕の一番大切な人の話です。
彼女のお陰で何をやっても駄目だった僕が変わることができました。
僕の彼女は僕より5歳年上です。
合コンで知り合い気があった僕らは付き合うことにしました。
会う日も次第に増えていき最終的にほぼ毎日会うようになりました。
最初は彼女の家に僕が行っていましたが彼女の提案で同棲する事になりました。
何をやっても駄目な僕を彼女はいつも応援してくれていました。
その結果フリーターだった僕が仕事するようになりました。
就職できた事を話したら彼女は自分の事のように喜んでくれて
就職パーティーをする事になり2人でショートケーキを食べました。
その時のお祝いだからと君がくれたイチゴの味は今も覚えています。
彼女は積極的でした。
ある日、喉が渇いてジュースを買いに行こうとした時
自販機の前で不良が煙草を吸っていて買いに行けずオドオドしていました。
そんな僕に気付いた彼女は何の前触れもなく当たり前のように買いに行ってくれました。
恥ずかしいですが最初にしたキスも彼女からでした。
携帯に2人のプリクラを貼ったのも彼女が先だし
カラオケに行って歌うのも彼女が先です。
そんな彼女が大好きで会う度声を聞く度彼女色に染まっていきました。
そんな仲がいい僕らが初めて喧嘩しました。
内容は僕が大好きなアーティストが着ていた革ジャンを見ていると
彼女が馬鹿にしたような顔で店を出ていったことでした。
態度が気に入らなかった僕は彼女に初めて反発しました。
最初は口げんかで直ぐに終わるだろうと思っていましたが段々エスカレートしていきました。
僕は彼女を置いて走って帰りました。
別に行くところもなくただ走っていました。
なんとなく冷たい風にあたりたくて。
その内に彼女を許していき同時に自分を許せなくなりました。
さっきの彼女の顔は見間違いだし怒ることはないと冷静になっていきました。
すると物凄く彼女に会いたくなり今すぐ抱きしめたくなりました。
そして僕は彼女が待つ家に走っていきました。
しかし彼女は居ませんでした。
直ぐ帰ってくるだろうと待っていましたが待っても待っても彼女は帰ってきませんでした。
僕は日に日に心配になっていきました。
そして何日か経ったある日一本の電話がかかりました。
その電話の内容を聞いた瞬間生きている意味を無くしました。
僕は病院に走った君が生きている事を祈って。
彼女の笑う顔が見たいから。
チョコレートを取り合いしたいから。
シャツを逆さに着てまた笑われたいから。
トイレが長いって言われたいから。
僕は走っていた 。
ふと電話の内容が頭の中をよぎった。
━━━…
ひき逃げであること。
彼女が重体で危ないこと。
道路で倒れていた女性はビニールに入った革ジャンを守るようにしてひかれていたこと。
今、彼女はこの世にいません。
しかし彼女は僕の何をやっても駄目な性格を直してくれました。
彼女は僕の全てです。
世界で一番大切で大好きな人でした…。
今では僕が年上の彼氏です。